JEC第2戦近畿、鈴木健二によってYZ250Xがデビューウィン
IBはMX-IAを寄せ付けない走りで前橋孝洋が勝ち星
JAPAN ENDURO CHAMPIONSHIP 2015
MFJ全日本エンデューロ選手権 第2戦 近畿大会
2015年7月12日 大阪府プラザ阪下
REPORT : 稲垣正倫(ANIMALHOUSE)
前日の湿度の高い暑さに比べれば、からっとした天候になったJEC第2戦近畿大会。とはいうものの、気温は日が高くなるにつれてぐんぐんと上昇、この数日涼しかっただけに温度差が激しく、ほとんどのライダーにとって暑さとの戦いが困難を極めた。通常のJECとは異なり、承認クラスと全日本ウィメンズクラスが午前中、全日本IA・IB・Nが11時からというタイムスケジュールであったが、後発のIA・IB・Nクラスは特に熾烈。
朝から気温はぐんぐん上昇した
満員御礼、大成功をおさめた近畿大会
今回、当日になって発表された周回数はIA・IBで9周。さらに、タイムオーダーは変則的で7周目が最も厳しい設定(1周17分、設定担当の吉川和宏が攻めて走って17分だったとのこと)、終盤は長めにとってムリをさせないとった配慮がなされていた。
1周目ですでにミスを冒すライダーが続出。まず、大きなトラブルに見舞われたのは内山裕太郎(YAMAHA)で、マシントラブルで4分のペナルティを受けてしまい、早々にトップ争いから脱落してしまう。また、開幕戦の覇者である釘村忠(Honda)も1周目にして転倒、ヒザを傷めてしまった。こうなると強さを発揮するのが、ベテランでありディフェンディングチャンピオンの鈴木健二。「ウォーターローディングもしていますし、熱中症対策も問題ない。こういう暑さのひどい時は、呼吸が大事です。集中して呼吸をとめてしまうと、逆にどんどん集中力が欠けてミスしてしまう」と実に大きな余裕を持って王者の貫禄を見せつけた。また、今大会よりJECでは初となるYZ250X(2ストロークの新型XCマシン)をデビューさせており、マシンとのマッチングも最高にいい。16個のテスト中、9個で一番時計をたたき出した。
鈴木健二がレースを巧みに操って優勝。「この暑さだったので、とにかく集中を乱さないようにしましたね」と鈴木。当然ウォーターローディングを普段からしていて、根っからのアスリート気質でレースへ臨む。実力の高さもさることながら、勝つことへの執念が強い。「バイクがいいですね、あとは。自分でやってきたし、去年はYZ250でしたけどXだと全然違いますよ。瞬発力も活かせますし」と。「日高はWR250Rで出ます。エンジンは、結構モディファイしてあります。去年の比ではなく、かなり追い込んでいますよ。エンジンはもつかどうか不安になるくらい。あとは、残った時間でどれだけ軽量化できるかですね」と。広島でのノーポイントが響くだけに、なんとしても残り4ラウンドは勝ちたいところ
ポイントリーダーの釘村忠。「ヒザ、腫れてきたし結構痛いですね…。今年はチャンピオンとりたいんですよ。日高は去年の失敗(エンジンをかけられなくて、ファイナルクロスに出場できず。電装系の劣化が原因だったそう)をしたくないですし、マシンをしっかりメンテしていきたい」と話す
目下2番手につけていたのは、矢野和都(KTM)。磨き上げたエクストリームテストでの優位さが他を圧倒。熱中症に苦しみながらも釘村を上回り続けた。しかし、悪夢が待っていたのは最後のタイムチェック。「2が5に見えた」という矢野、嘔吐してしまうほど熱にやられていたこともあり、まさかの早着で3分のペナルティ。これで一旦5番手まで沈んだものの、最終のファイナルクロスで鈴木をも7秒以上離す圧勝を遂げ、早着分の繰り上がりで3番手であた渡會修也(KAWASAKI)を退け3位の表彰台へ登壇。見事な返り咲きとなった。
3位、矢野和都。「蓮(石戸谷)くんと、楽さん(鈴木里美)がサポートしてくれたおかげでなんとかなりました…。ファイナルクロス前に嘔吐してるんですよ、辛くて。熱中症になったと思って過剰摂取しちゃったんですよね。今回は、結構トラブル続出しました。ブレーキ効かなくなったり。全部青空メンテで対処してて、相当辛かったです。去年こんなに辛かったかなぁ…今年はすごくやばかったなぁ。あとテスト毎に目標をたてづらかったのも、辛かったですね。去年はマチャ(小林雅裕)とテストでも競ったりできたんですが、今年は難しかった」
IBは、MX-IAでありレジェンドの沼田誠司(KAWASAKI)、同じくMX-IAで若手の村上洸太(Honda)が注目の的。特に近畿大会はモトクロススキルが非常にアドバンテージを持っているところだが、この不利な状況で前橋孝洋(YAMAHA)は一番時計を9つ。MX-IA勢をも寄せ付けないエンデューロライダーの層の厚さを見せつけて優勝。2位は村上、3位は沼田。IAでも5位に食い込むタイムで圧倒した。
前橋孝洋がIBを圧勝。「沼田さん、村上さん、熊本(悠太)さんが絶対くるだろうな、と意識してました」のこと
沼田誠司は後半タイムをまとめてきて2位。「優勝してIAに上がるつもりだったんですけど、日本には速い人がいるものですね…」とのこと。体力に自信があるので、もう少し長かったらうれしいとさすがのコメント
ナショナルは、定義でのJEC以来久々の2度目のJECとなった石戸谷蓮(KTM)が勝利。ウィメンズでは、石榑瑠花(YAMAHA)が初参戦にしてトップタイムを連発するものの、2分の遅着で近藤香織(YAMAHA)が辛勝。
石戸谷蓮は、総合でも上位に食い込みたいと考えていただけに、少し悔しい立ち上がり
貫禄勝ちの近藤香織
ファイナルクロスは、1位・矢野、2位・鈴木、3位・内山
河内長野の街をバックに、コンパクトなオンタイムエンデューロが開催された