優勝争いを経て 2位になった野崎史高
2015全日本トライアル選手権シリーズ第2戦近畿大会 会場を名阪スポーツランドに移して3年目となる全日本選手権近畿大会。朝から雨がぱらついて、3年連続で雨模様の近畿大会となるやと思われたが、天気予報は大きくはずれて、スーパークラスのライダーが3セクションに到着する頃には晴れ間も見えきた。暑くも寒くもなく、絶好のトライアル日和。ただしきまぐれな天候は、スタートの早かった国際B級のライダーには悩みを与えることになったようだ。 ■国際A級スーパークラス 黒山健一(ヤマハ)の全日本選手権80勝目がかかっていた大会。記録も重要だが、ここで勝利をすればランキング争いでも優位に立ち、黒山らしい横綱トライアルが復活することになる。 序盤から好調だったのは野崎史高(ヤマハ)だ。第4セクションまでを丁寧にクリーンし、今年から乗りはじめた2ストロークマシンとのコンビネーションのよさをアピールする。ゼッケン1番の小川友幸(ホンダ)は第2セクション出口で失速してしまって1点を失い、ちょっと不安な立ち上がりとなった。しかしそれ以上に不運が重なったのが黒山だった。 第3セクションアウトの崖を登れず5点、第4では出口の罠につかまって3点、さらに第5では、エンジンが止まった時点でアンダーガードが岩にかかっていて5点(エンジンが停止した際は、タイヤのみで接地していた場合は減点にはならないが、タイヤ以外の接地があり、マシンが停止していれば5点となる)。登るだけでも神業が必要となる第7セクションは1点で切り抜けたが、4セクションを走って14点を失った。黒山は2ラップ目にラップ3点のベストスコアをマークするが(小川友幸も2ラップ目に3点をマークした)、追い上げはならずといった感じだ。 ヤマハ陣営にとって、今回小川を追いつめて勝利を狙うのは、野崎だった。野崎はすべてのラップを一桁減点でまとめてきたが、しかしそれ以上に小川は好調だった。それでも、3ラップを終えたところで3点差。今回の優勝争いは、まちがいなく野崎と小川によって展開されていた。 最後に用意されていたSSは、難度が高いだけに多くのライダーの逆転劇が期待された。その筆頭が、優勝争いだった。しかし結果、SSを一つでも抜けられたのはトップ4だけで、そして成績のいい順にSSのスコアもいいという結末でこの日の戦いは幕となった。 小川の今シーズン初勝利は、実は2014年北海道大会以来の勝利。しばらく遠ざかっていた勝利だっただけに、小川は今回の勝利でランキングトップに出たことよりも、まずは1勝の喜びを深く感じていた。 【小川友幸のコメント】 「1ラップ目の2セクションで1点をとったときには、悪い予感が頭をよぎって不安になりましたが、よく修正することができました。今日のセクションは、オールクリーンができるものだったので、どこかのラップでオールクリーンをしてやろうと思っていたのですが、それができなかったのは残念です。3ラップ目は、3セクションで1点を取ってしまい、せめて1点でと思った結果が、10セクションでの5点でした。勝負としては、大きな反省点です。でも久しぶりの勝利なので、素直にうれしいです」 【野崎史高のコメント】 「勝てなかったのは悔しいですが、優勝争いをしての2位という結果は、まずはよかったと思います。いいわけとするつもりはないですが、開幕戦はマシンに対しての不慣れな部分がずいぶんと出てしまいました。今回は乗り込みができたので、もう言い訳ができないと思って臨んだのですが、結果が出てよかったと思います。この走りができれば優勝争いができると言うのは収穫ですが、これくらいのプレッシャーでは小川選手は動じてくれないので、さらにレベルの高いところを目指します」 【黒山健一のコメント】 「うまくいかないですね。5点や3点にはそれぞれの状況や原因がありますが、すべてぼくのミスです。こんなふうにミスが出てしまうと、勝てないですね。全日本80勝目は次の九州大会に持ち越しとなりましたが、その前に世界選手権がありますから、そこで気持ちよく走って、はずみをつけたいと思います」
2014年、IASにエントリーしたものの負傷によりシーズンの大半を休むことになった永久保恭平(ベータ)が、国際A級復帰2戦目にして勝利を飾った。永久保は1ラップ目に5点を含む7点の減点が会ったが、2ラップ目3ラップ目はどちらもオールクリーンの見事な走りで、逆転勝利を得た。 1ラップ目のトップは徳丸新伍(ホンダ)で5点、2位には小谷徹(ガスガス)が6点で続き、永久保は7点で5位につけていた。この日の国際A級はすべてのセクションがクリーン可能で、トップ10に入るようなライダーのスコアを見れば、どのセクションでも一度はクリーンを出している。しかし1ラップを通してクリーンをするのは、より大きな集中力が必要になる。小谷は2ラップ目にラップオールクリーンをして、徳丸との優勝争いを有利に運びかけていたが、しかし永久保が後半の2ラップをともにオールクリーンを達成、勝ったと思った小谷は2位に甘んじることになった。 永久保はIAS昇格を決めた2013年最終戦のSUGO大会以来の勝利。開幕戦は8位だったが、2戦目にして自分のあるべきポジションを奪い返したことになる。 【永久保恭平のコメント】 「今年はチャンピオンをとるつもりで、毎回勝つつもりだったのですが、開幕戦は8位でふがいない成績だったので、今回は絶対勝つぞと気合いを入れなおして走りました。チャンピオンをとって、もう一度IASを走るかどうかはまだわからないのですが、IASに昇格するなら、チャンピオンをとってあがりたいというのが、今年の目標です。次もがんばります」
二連勝の山崎(左) 2位塚本(中央)、3位長嶋(右)
近畿大会には、毎年ここだけに参加して好成績をおさめていくベテランライダーがいる。たとえば山本昌也の黄金時代にIBチャンピオンとなってた和田弘行(ホンダ)がそうだが、和田はエンジンのシャフトがなめてしまうトラブルでリタイヤとなった。岸下卓也(ホンダ)や、年齢は若いが塚本厚志(ホンダ)も久々の全日本参戦となる。 そんな、自分が生まれる前からトライアルをやっているような先輩たちを向こうに回し、開幕2連覇を飾ったのが山崎頌太(ベータ)だった。山崎は1ラップ目から快調で、これなら2連覇もと思ったものの、2ラップ目にクリーンセクションの第1で2点を失い、第4で5点を取るなど、大きく減点を増やしてしまう。 しかし結果、山崎を追いつめるべき塚本も2ラップ目9点と、2ラップ目の山崎より1点スコアがよかっただけで、他にも山崎を逆転できるライダーは現れず。山崎の開幕2連覇が決まった。 中学生の全日本ライダーは、IB昇格1年目の去年は惜しいところでIA昇格を逃したが、今年は一気に主役に躍り出た。 【山崎頌太のコメント】 「1ラップ目は勝ちパターンでしたが、2ラップ目にこれはどうかなとちょっと不安になりました。でも2位の人も、同じように減点をしていたので、勝ててよかったです。全日本の雰囲気にもだいぶ慣れてきて、勝つコツというか、気持ちの持ち方が分かってきたような気がします。このまま連覇を続けたいです」