1ラップ目からトップを走った 2位の小川毅士
2015全日本トライアル選手権シリーズ第4戦北海道大会 台風11号が日本列島を襲った週末、毎年恒例の全日本選手権トライアルは北海道大会。雨を覚悟した天気はうそのように晴れ、暑くて熱射病の心配をしなければいけないほどだった。遠方から遠征の選手も無事に到着し、北海道へ渡るフェリーも揺れがほとんどなしという、台風の影響がほとんどない北海道大会となった。 参加者は国際A級スーパークラス13名、国際A級30名、国際B級37名、そして併催のエキシビジョン125クラス1名、オープントロフィーNAクラス3名で、総勢84名だった。 ■国際A級スーパークラス 今回用意されたセクションは8セクション。これを3ラップして、SSが2セクション。SSの第1は専用セクションで、SS第2は第8セクション(最終セクション)を手直ししたものだ。 セクションの配置や概要は大きく変わっていないが、派手なむずかしさよりも細かいテクニックを駆使しなければ好結果が得られない設定となっていた印象。 それでもトップライダーにとってはクリーンで抜けるべきセクションが多く、彼らにとっての勝負どころは第4セクションと第5セクションとなった。第4セクションは毎年難度が高く設定されているセクションで、大きなヒューム管を超えるための加速ポイントが鬼門だ。 1ラップ目、ここで5点を取ってしまったのが小川友幸(ホンダ)と野崎史高(ヤマハ)。このふたりは3セクションを見事クリーンしてきたのだが、波に乗ることができなかった。逆に、第3で1点を取った黒山健一(ヤマハ)と2点を取った小川毅士(ベータ)は、このセクションをクリーン。細かい点差ながら、黒山、小川毅士、小川友幸、野崎の順で試合が本格的に始まった。 しかし次の第5セクション、ここは水がわき出ていてパワーコントロールがむずかしいセクションだ。野本佳章(ベータ)がクリーン、田中善弘(ベータ)が2点など、トップライダーはみなクリーンかと思わせたのだが、開けてみれば小川毅士と小川友幸が3点、黒山と野崎が5点と、みな大きな減点をとってしまった。 さらにこのあと、最終第8セクション。ここはダイナミックなセクションだが、トップライダーにとってはクリーンして当然。ところがここで、小川友幸が岩から岩への飛び出しに失敗して転落。1ラップ目の結果は小川毅士が5点でトップ、続いて黒山が6点、野崎10点、小川友幸が14点となっていた。 2ラップ目、このラップのベストスコアをマークしたのは、小川友幸だった。4点。鬼門第4セクションで3点、第5セクションで1点を取ったのみ。このラップは黒山、小川毅士、野崎ともに5点を二つずつの10点となっていて、1ラップ目の出遅れをずいぶんと取り返した結果となった。それでもトップは依然として小川毅士、2位黒山にも変化はなく、小川友幸は4位から3位にポジションをアップしただけの2ラップ目だった。 3ラップ目、このラップでもふたたび小川友幸がトップスコアをマーク。第5セクションでの2点のみ。8セクション中7セクションをクリーンしたことになる。しかし黒山も立派。小川友幸と同じ2点でまとめてきた。こちらは1点が二つ。この二人に対し、わずかに減点が多かったのが小川毅士だ。5点はなし、3点と2点と1点が一つずつの計6点。しかしこれで小川毅士はトップから3位まで滑り落ちることになった。トップ争いは、ほんの少しのミスが順位を入れ替える。 残すところはSSのふたつだけ。しかしこのSS、難度は高く順位の入れ替わりもありそうだ。トップ黒山は18点、2位小川友幸は20点、小川毅士が21点。少し差はついたが、野崎も27点で追っている。野崎がSSを両方ともクリーンし、ほかの3人がふたつとも5点となれば、野崎の優勝も計算上はあり得る。 SS第1。SSではいつもいい走りを見せる柴田暁(ホンダ)が1点で通過。あとに控えるトップの4人に期待が集まった。しかしなんと、4人はそろって5点。これでまず野崎の表彰台の可能性が消えて4位決定となった。 SS第2では、タイムオーバーとなりながら野本佳章(ベータ)がアウトまでマシンを走らせた。そしてトップのトライ。トップ4の先陣を切ってトライするのが小川毅士だった。そして見事クリーン。 4位が決まってしまった野崎が5点となったあと、黒山がトライ。黒山は、小川毅士にも増してパーフェクトなトライでSS第2をクリーン。小川友幸のトライを待たずに黒山の勝利が決定した。 最後に小川友幸。優勝は逃したが、小川毅士との2位争いはまだ続いている。しかし小川友幸は野崎と同じく5点。小川毅士にトータル4点差、2位は小川毅士、3位が小川友幸となって、北海道大会は幕を下ろすことになった。 ランキングでは黒山健一がトップに。しかし小川友幸も同点で並んでいる。残り3戦、チャンピオン争いは振り出しに戻った。。 【黒山健一のコメント】 「今日は最後の最後まで、誰が勝ってもおかしくない大会だったと思いますが、ぼくを含めて、みんながいまひとつ乗れていない感じだったようでした。その中で、少しだけぼくに運があったのだと思います。これでランキングトップになりましたが、まだあと3戦ありますから、がんばりたいと思います」 【小川毅士のコメント】 「SS第2では、小川さんが当然上がるだろうと思っていたので、今日は3位だなと思って、パドックに帰ろうかと思っていたら小川さんが失敗して2位をいただきました。内容的にはあんまりいいとは思えませんでした。特に2ラップ目の第7の5点は残念でした。最後は腕もつってしまいましたが、そんな中で結果が出たのでよかったです」 【小川友幸ものコメント】 「今日は前半からズタボロでした。ちょっとトラブルをかかえていて、解決できないままに北海道へ来てしまいました。2ラップ目3ラップ目には少し持ち直しましたが、それでも完璧ではなかったと思います。SSも得意パターンだったのですが、失敗でした。チャンピオン争いも、ゼロからやりなおしです」
前戦九州大会で初勝利を飾った氏川湧雅(ガスガス)が2連勝を飾った。クリーンセクションといっていい第1セクションで2点を失って幸先はあやしかったのだが、その後はほぼ完璧。特に3ラップ目には8セクションすべてをクリーン。2位にダブルスコアに近い差をつけて勝利した。 この勝利で、氏川はランキングでも岡村将敏(ガスガス)を逆転してトップに躍り出ている。 2位は小谷徹(ガスガス)、3位に村田慎示(ホンダ)が入った。優勝した氏川とは親子以上の差のある幅広い表彰台の顔ぶれとなった。 【氏川湧雅のコメント】 「第1セクションで2点ついてしまったんですが、そこから取り返して逆に集中できたのではないかなと思います。むずかしいのは第4セクションと第5セクションでしたが、ここは5点にはならず、第7セクションでまくれてしまったのが唯一の5点でした。3ラップ目はオールクリーンもできたので、よかったです」
連勝中の山崎(中央) 2位倉持(右)、3位沖(左)
今シーズン、負けなしの山崎翔太(ベータ)が4連勝を達成。2位倉持晃人(ガスガス)にトリプルスコア以上の大差をつけての勝利だった。 難セクションの第5セクションで減点した以外はすべてクリーンという大勝ぶり。5点は一つもない。今回は会心の勝利に近かったようで、この勢いで残り3戦も勝利すると言葉静かに宣言している。 【山崎頌太のコメント】 「今日は、自分に自信がついて、プレッシャーもいい方向に働いて、いい感じになってきています。減点をしたのは第4と第5だけなのですが、セクションは全体的にむずかしいところのあるものでした。納得のできないところもありますが、自分なりにもいい走りができたと思います」